POLICY DOSSIER · AI IMAGE GEN
FILE NO. 11 — FULLY LOCAL GENERATIVE AI

社外にデータを
一切出さない画像生成AI。

これまで調査した10社(Claude・ChatGPT・Adobe Firefly・Google・Midjourney・Microsoft Copilot・xAI Grok・Canva AI・Meta・AWS)は、いずれもクラウド上のサーバーにデータを送信して処理する仕組みでした。 本ページでは視点を変え、モデルの重み(weights)自体が公開されており、自社のPC・サーバーだけで完結して動かせる「完全ローカル型」の画像生成AIを取り上げます。

こんな中小企業を想定しています クラウド型のAIサービスは便利ですが、業種によっては「そもそも社外のサーバーに一切送信できない画像」を扱う場面があります。たとえば製造業であれば、
  • まだ発表していない新製品のCAD図面・3Dモデルの画像
  • セキュリティ上、外部に出せない工場内部の写真(生産ライン、設備配置など)
  • 取引先に見せられない不良品・欠陥品の写真(品質管理・原因分析用)
  • 守秘義務(NDA)のある顧客からの図面・仕様書の画像
こうした画像をAIで加工・生成・分析したい場合、クラウド型のサービスにアップロードすること自体がリスクになり得ます。完全ローカル型のAIであれば、モデルを自社のPC・サーバーにダウンロードして動かすため、画像データがインターネットを経由して外部に送信されることが一切なく、情報漏えいのリスクを構造的に遮断できます。
01 — AT A GLANCE

3社の設計思想の違い

3社とも「モデルの重みが公開されており、完全ローカルで実行できる」という共通点がありますが、商用利用の線引き方・補償の考え方はそれぞれ大きく異なります。

論点 Stability AI Black Forest Labs Tencent
完全ローカル実行時のデータ送信 なし なし なし
商用利用の線引き方 年間売上高基準 モデル種別基準 地域制限+MAU基準
IP侵害への補償(indemnification) 提供なし(逆方向) 提供なし(逆方向) 提供なし(逆方向)
訴訟提起でライセンス終了する条項 あり 明確な確認情報なし あり
GOOD ユーザー保護が明確 WARN 条件付き・要確認 CAUTION 保護が弱い・提供なし

01 / Stability AI — Stable Diffusion

完全ローカル実行時、画像データはどこにも送信されない

Stable Diffusionのモデルの重みをダウンロードし、自社のPC・GPUサーバー上で推論(画像生成)を実行する場合、入力するプロンプト・参照画像、生成された画像のいずれも、Stability AIを含む外部のサーバーには一切送信されません。Stability AIには、このデータにアクセスする技術的な手段自体が存在しないため、学習利用やプライバシーポリシーの適用対象にもなりません。機密性の高い画像(未公開の製品デザイン、工場写真、顧客図面など)を扱う中小企業にとって、最も明確なメリットです。

『完全ローカル』であることの技術的な裏付け

商用利用は認められているか(年間売上高がカギ)

Stable Diffusionの商用利用可否は、利用組織の年間売上高が基準になっている点が特徴です。旧世代モデル(1.5、SDXL等)はCreativeML Open RAIL-Mライセンスで売上高の制限なく商用利用可能。新世代モデル(SD3、3.5等)はStability AI Community Licenseが適用され、年間売上高100万米ドル未満の個人・組織であれば無償で商用利用が可能です。超える場合は有償のEnterprise Licenseが必要になります。この基準は自己ホストでもAPI経由でも同じです。

補償の向き ― ユーザーがStability AIを補償する構成

Stable Diffusion 3.5のライセンス文書には、「あなたは、本契約に違反する形での利用・頒布に起因する第三者からのいかなる請求からも、Stability AIを補償し、免責する」と明記されています。これは多くの他社のEnterprise向け補償とは逆方向の構成です。さらに、「あなたがStability AI Materialsやその出力が自らの知的財産権を侵害していると主張する訴訟を提起した場合、その時点でライセンスが即座に終了する」という訴訟対策条項も含まれています。

実際の訴訟事例

Getty Imagesは、Stability AIが著作権画像を無断で学習データに利用したとして提訴しました。詳細は訴訟事例ページをご覧ください。

02 / Black Forest Labs — FLUX

完全ローカル実行時、画像データはどこにも送信されない

FLUXシリーズのうち、重みが公開されローカル実行が可能なのは[schnell](Apache 2.0)と[dev](非商用ライセンス)です。これらの重みをダウンロードして自社のPC・サーバー上で実行する場合、入力するプロンプト・参照画像、生成された画像のいずれも、BFLのサーバーには一切送信されません。[pro]は重みが非公開でAPI経由の利用に限られるため、完全ローカルの対象外です。

『完全ローカル』であることの技術的な裏付け

商用利用は認められているか(モデルの種類がカギ)

FLUXの商用利用可否は、Stability AIのような売上高基準ではなく、利用するモデルの種類(schnell/dev/pro)によって決まります。FLUX [schnell]はApache 2.0ライセンスにより、自己ホスト・ファインチューニングを含め無条件・無償で商用利用が可能です。FLUX [dev]は重みをダウンロードしての利用は非商用目的に限定され、商用利用したい場合は、BFLの公式APIを利用するか、有償のSelf-Hosted Commercial Licenseを取得する必要があります。

Enterpriseとして導入する場合

BFLは、モデルの重みを自社インフラにダウンロードして稼働させる企業向けに「Self-Hosted Commercial License」を提供しています。この契約形態では、生成データが自社インフラ内にとどまり、BFLのサーバーを経由しないため、完全ローカル運用の構造を保ったまま商用利用が可能です。devモデルの非商用ライセンスでは、NSFW・IP侵害コンテンツを検知するコンテンツフィルター(または人手レビュー体制)の実装が義務付けられている点にも注意してください。

補償の向き ― ここでもユーザーがBFLを補償する構成

FLUXのDeveloper Terms of Serviceおよびdevモデルのライセンス文書には、「ユーザーは、本サービス・モデルの利用、コンテンツフィルターの不備、規約違反、第三者の権利侵害などに起因する請求から、BFLを補償し、防御する」という条項が明記されています。BFLがユーザーを守る方向のIP補償は、公式文書からは確認できませんでした。

03 / Tencent — HunyuanImage

完全ローカル実行時、画像データはどこにも送信されない

HunyuanImageは、Tencentの研究開発チームが開発した画像生成モデルで、GitHub・Hugging Faceで重みが公開されており、自社のPC・サーバーにダウンロードして完全にローカルで実行できます。モデルの重みをダウンロードして自社のPC・サーバー上で実行する場合、入力するプロンプト・参照画像、生成された画像のいずれも、Tencentのサーバーには一切送信されません。

『完全ローカル』であることの技術的な裏付け

地域(Territory)制限という独自の論点

Tencent Hunyuan Community License Agreementには、「本契約はEU(欧州連合)、英国、および韓国には適用されない」と明記されています。これは、Stable Diffusion・FLUXには見られない、HunyuanImage独自の重要な制限です。データの送受信の有無とは別に、法的な利用許諾そのものに関わる論点である点に注意してください。日本在住者は、この地域制限の対象には含まれていません(2026年8月時点)が、ライセンス文言は更新される可能性があります。

商用利用は認められているか(表向きは緩やか、ただし2つの条件に注意)

Tencent Hunyuan Community Licenseは、個人・企業が自由にモデルを利用・複製・頒布・改変でき、商用利用・派生物の開発を支援するとされ、Stable Diffusion・FLUX devよりも表向きは緩やかな条件です。ただし、(1)前述の地域制限(EU・英国・韓国は対象外)、(2)自社製品・サービスの月間アクティブユーザー(MAU)が1億人を超える場合はTencentへの追加ライセンス申請が必要、という2つの条件には注意が必要です。中小企業の完全ローカル利用であれば、MAU基準に抵触するケースは通常考えにくいですが、地域制限は拠点・取引先の所在地によって関わってくる可能性があります。

補償の向き ― ここでもユーザーがTencentを補償する構成

Tencent Hunyuan Community License Agreementには、「あなたは、本ソフトウェア・出力の利用または頒布に起因する第三者からのいかなる請求からも、Tencentを補償し、防御し、免責する」と明記されています。さらに、「あなたが、本マテリアルまたはその出力が自らの知的財産権を侵害しているとする訴訟をTencentまたは第三者に対して提起した場合、本契約に基づくすべてのライセンスは終了する」という訴訟対策条項も含まれています。

02 — SUMMARY

まとめ:完全ローカル型を選ぶ際のチェックポイント