画像生成AIの学習データの適法性、生成物の著作権保護、既存キャラクターの無断利用など、複数の重要な訴訟が米国・英国で係属中、あるいは判断が示されています。 本ページでは、2026年8月時点で公になっている主要な事例を整理します。訴訟は今も進行中であり、状況は変わり得ます。最新情報は各訴訟の一次情報源でご確認ください。
コンピューター科学者のStephen Thaler博士が、自ら開発したAIシステム「Creativity Machine」が単独で生成した視覚芸術作品「A Recent Entrance to Paradise」について、著作権登録を申請した事案です。Thaler氏は、AIシステム自体を「著作者」として申請し、人間による創作的関与は一切ないと明言していました。米国著作権局はこれを拒否し、連邦地裁・控訴審(D.C.巡回区控訴裁判所、2025年3月)もこれを支持。2026年3月2日、連邦最高裁判所は上告を受理しない(certiorari拒否)決定を下し、下級審の判断が確定しました。
結論:人間の創作的関与が一切ないAI生成物単体は、米国では著作権登録の対象にならないという「人間著作者要件」が維持されました。ただし、この判断はThaler氏があえて人間の関与をゼロと申告した特殊な事案に基づくものであり、プロンプトの工夫や画像の選別・加筆修正など、人間が実質的な創作的関与を行った場合にどこまで著作権が認められるかという、より一般的な論点には直接回答していない点に注意が必要です。
イラストレーターのSarah Andersen氏、Kelly McKernan氏、Karla Ortiz氏らが、Stability AI・Midjourney・DeviantArt(後にRunwayも追加)を相手取り、無断で著作権画像を学習データに利用したとして提起したクラス・アクションです。2023年10月、判事は一部請求(DMCA第1202条に基づく権利管理情報の除去に関する請求など)を却下しましたが、直接侵害を含む中心的な著作権侵害の主張は審理が継続されています。2026年9月に陪審審理が予定されています。
争点:AIモデルの学習のために著作権保護されたコンテンツを無断でスクレイピング・利用することが、米国著作権法上の「フェアユース」に該当するか。
Getty Imagesは、Stability AIが自社の保有する数百万点のストック画像を、許諾なくStable Diffusionの学習データに利用したとして、英国と米国の両方で提訴しました。英国の訴訟では、2025年11月に高等法院が著作権侵害に関する中心的な主張を退ける判断を示しましたが、Getty側は控訴しています。1,000億円規模ともされる巨額の損害賠償請求は、認められればStability AIの経営に深刻な影響を与える可能性があるとも報じられています。米国側の訴訟は別途手続きが継続しています。
争点:Stable Diffusionの学習データにGetty所有の画像が含まれていたか、また含まれていた場合に英国・米国それぞれの著作権法上どのような法的評価がなされるか。
Disney・NBCUniversal・Warner Bros.が、Midjourneyに対して著作権侵害および商標権侵害で提訴した事案です(2025年6月、Disney・Universalが提訴し、その後Warner Bros.の訴訟と統合)。原告らは、Midjourneyがミッキーマウス、ダース・ベイダー、ヨーダ、シュレック、バート・シンプソンなど、多数の著名キャラクターを、簡単なプロンプト(キャラクター名を入力するだけなど)で生成できる状態にしており、これが大規模な著作権侵害を助長していると主張しています。Midjourney側は「フェアユース」を主張して争っており、逆にスタジオ側が自社でどのようにAIを利用しているかの開示を求める申し立ても行うなど、双方の攻防が続いています。2026年10月に専門家意見の開示期限が設定されています。
争点:ユーザーが著名キャラクターを想起させるプロンプトを入力した際に生成AIサービスがその画像を出力できること自体が、サービス提供者による著作権・商標権侵害の「寄与侵害」を構成するか。商標権侵害の主張は、著作権侵害よりも重い法的評価(3倍賠償の可能性)を伴う点で、他の訴訟と一線を画します。